男新次はつっ走る さあ 買った買った! 魚屋の新次の お通りだよ! あら 新さん さんまをもらうから 帰りに寄っとくれよ あいよ! お吟姉さん 今日もきれいだよ まっ おだてたって 何も出やしないよ! ハハハハハ ぐえ!! どん バシャッ あたたたたた… てやんでェ どこのどいつだァ!? 何とか言えよ このヤロ… ひえっ! お侍さまっ!! こ これは とんだ御無礼を いたしやした! ガバッ 知らぬ事とはいえ 平にお許しを! 命ばかりは お助けを〜〜 ククッ フム… 魚屋か… 拙者 将軍家の家臣で 林城太郎と 申す者だが その方 拙者の下で 将軍家の御用商人を やってみないか? へえ? ささ むさくるしい所ですが 入いっておくんなさいまし 話しは中で…… へへ ガタピシ フム 申す通り むさい所だな ボロッ ハハハ まいったなあ それで あの…… 毎朝俺が 魚を魚河岸から運び お殿様に献上するって わけですか? ウム 上様は 活きのいい魚を 御所望でな いきおい魚河岸から 魚を取りつける町人が 必要になったわけだ そして俺は 献上された魚を 吟味する役目を おおせつかったのだ 近く城中で 審議がとり行われ それに通れば 俺にとってはまたとない 出世になるのだ だが一方 拙者の出世をねたんで 吟味役を失脚させようと 企てる者もおるのだ もちろんお前には 誰にも危害を加えさせない 俺が必ず守ってやる どうだ 俺のために 働いてくれるか? へ へい そりゃもう 喜んで… だけど信じられないなあ 俺が将軍様の 御用商人になれるなんて お侍様のような ご立派な方から お名ざしを受けるのも 信じられないのに… すまぬが 体をふきたいので 湯を所望できぬか 歩きどうしで 体が汗ばんでな へ へい ただいま 気がつきませんで… ジャー… お待たせしました せんえつながら あっしが洗わさして いただきやす あっ! かたじけない さあ 遠りょはいらん ごしごしやってくれ へ へい… ピチョン… なぜ手が ふるえている? 顔も赤いが は はい…あの お侍様の背中の傷が… あ あのいえ… そう…か 俺の背中の傷が 怖いのか… こんなものは 侍の世界では 何んでもないものだ だが新次よ 手のふるえは説明したが 顔の赤みはまだ 解決してはおらぬぞ よしっ! 今度は俺が 洗ってやる! バッ ああーっ!! や やめて くださいましっ!! ダ・ダメ! 城太郎様!! もじ… だからやめてって 言ったのに… フム 思ったとおりだな うまく隠した つもりだろうが でかくなっちまった 雁首が丸見えだぜ くっ ドガーン わ 笑って下さいよ 俺 お侍様の立派な体を 見ているうちに 興奮しちまって… どうかしてるんです 女の体を見たって 何ともないのに… 笑ったりなんぞ しないよ よく見ろよ 俺の一物だって お前の裸を見たとたんに このしまつなんだ 世の中には 男の体を見て高ぶる 野郎もいるってことさ 俺はガキの頃から 男に囲まれて育ってきた 来る日も来る日も 大男たちの中で 剣の修業に 明け暮れていたのだ そして夜になれば 俺は男たちの なぐさみ者だった 何人もの男の下で 俺の尻は休む間もなかった 初めは苦痛だった だが それがいつの間にか 喜びに変わっていった いつしか俺は 女のほとのいらない 男色者となっていたのだ 道で会ったとたん お前が好きになった 俺はお前が欲しい 抱かせてくれるか? 俺の体で 男色のいろはを 教えてやりたいのだ へ へい… キャッキャッ ワーッ ワーワー 新 次 はい…? この仕事が 落着したら 一緒に 暮らそうな は はい… 覚悟!! えっ!? ズバッ 城太郎様!! 新次… お前を 騙していて… ズ… すまなかった… ズシャッ 城 太 郎 様 ッ !! 城太郎様!! 城太郎様!! キッ この人でなしっ! 刀を抜いていない者を 斬るなんて 卑怯じゃないか!! この人は 将軍様の御家来の 林城太郎様なんだぞ てめえは城太郎様の 出世のじゃまをする 悪党だな!? 小僧 勘違いされては困る 拙者が本物の 林城太郎なのだ こやつは拙者の仇敵 上代家老長尾十蔵が さしむけた隠密なのだ そ そんな… 長尾が拙者のにせ者を 城下に放ったと知り 探しておったのだ ベリリ… 長尾のやつめ 拙者に化けたにせ者を使い 殿に腐った魚を献上させ 拙者を失脚させようと いうはらだったのだ 顔は拙者に 似せてはおるが まだ若い 長尾十蔵などに つかねば 殺されまいに この仕事が 落着したら 一緒に 暮らそうな 城 太 郎 様 ァ … !! 新次とやら 手間をかけたな 拙者自身の問題に もう少しでその方を まき込むところだった 許してくれ さて 拙者は 評判の魚屋を 探すとするか あ あの 旦那… 何だ い いえ… 何でも… ふっ… さあ 買った買った! 魚屋の新次の お通りだよ!