男たちの夏 夏休みを利用して僕 工藤雄二は 大学の山岳会のメンバー重森辰男と二人で 南アルプス登山に出た 椹島を起点にしてアルプスを縦走 再び椹島に戻る一泊二日のコースだ しかしその帰り道 ひどいスコールに見舞われていた おい、重森 早く歩けよ そんな事言ったってこの雨じゃあ… もたもたしてると夕暮れまでにふもとまで戻れないだろ! ズルッ うわっ!? うわああっ…!! 工藤ッ!! う…ん ザー… ここは… ズキッ いてっ!! コックリ コックリ 重森… そうか 俺 崖から落ちて気を失って… ここは… どこの山小屋だろ 誰かいないのかな ガラッ あっ… 突然目の前に飛び込んできたのは 逞しい全裸の青年の後ろ姿だった…! ゴクッ やあ 気がついたんだね よかった頭を打ってたんで医者が必要かなと思ってたんだが あの… 工藤君だろ? 自己紹介しよう 俺 堤圭介 銀行マンなんだ この山小屋へは大学のころから夏になるたび来ているんだよ すみません… 助けていただいて… ちょうど薪になる木をとろうと思って下の沢を通りかかってね 初めて目にする年上の男性のはりつめたような肉体を 僕は魅せられたように凝視していた 恥ずかしいところを見られちゃったけど ここには風呂がないから雨は格好のシャワーなんだ しかし、彼はこちらを向いてはくれず 僕はどうしても前を見てみたい衝動にかられた あの… ス… すまない こっちに来ないでくれないか! ビクッ あ… それは思いがけなく鋭い語調で発せられた ザー… フッ すまない大声をあげて… クルッ 笑ってくれよ 実はこういう始末だったんだ… あっ… そこに現れたのは僕が予想もしなかった 雨に濡れて息づく逞しい男根だった シャワーなんて大うそさ 本当は君の下着姿を見てこうなっちまったんで雨で冷やしてたんだ… 君みたいな子が俺の理想なんだよ 変態だよ 俺は… 待って下さいッ! バッ 彼にこれ以上みじめな思いをさせておけないと思った僕は この時、自分でも驚くことをやってのけた…! 見て下さい 僕もあなたを見てこうなったんですから… 君… この瞬間からもう二人に言葉はいらなかった 互いの勇姿を見れば全てが理解できたのだ チャッ 僕… 始めてなんです… 優しくするよ 翌朝 重森はひとりで山を降りていった それじゃあ工藤 おふくろさんにはそう伝えておくよ ああ、足のねんざが治ってないし  堤さんも、もう少しいた方がいいって 夏休みが終わるころには帰れると思うから 重森には悪いが うそをついていた じゃなーっ このすばらしい体験を一夜限りのものにしたくなかったし 何よりも堤さんと別れたくなかったのだ これから一夏中 君に男どうしの愛を俺が教えてやる ──と堤さんは言った 大好きな兄貴のような彼に アルプスの大自然の中で思いきり愛される僕 ───最高さ! END