夏色転校生 高校一年の夏 僕 川口光男にとっては秘かな胸さわぎの季節になりそうだった 中学の時転校していった幼なじみの先輩 土屋剛が 同じ高校に転校してきたんだ ヨッ! おはよーさん 彼には小さい時から恋心を抱いていた僕 だけど彼が女好きだったらと躊躇して告白できぬまま別れてしまったってわけ 今こそチャンス到来! 勇気をふりしぼって ──といきたいところだが 今の僕には彼への想いを素直にうちあけられない悲しい秘密があったんだ これからはまたいっしょだな ん! 青く残るひげそりのあと 高いのどぼとけ── 剛さん… しばらく見ないうちに大人になったなァ 中学の時はインキンに悩むひょうきんなバスケット部の部長だったけど ずいぶん変わるものだなァ ああ 金玉の毛がかゆい またインキンの季節がきちまったかァ! ボリボリ… グワン だめだ ちっとも変わってない… おい 光男 ちょっとかいてくれないか? や やだよ そんなとこ! でも── ちょっと見てみたい気もするけど よお 川口 ここんとこ顔を見せねえじゃねえか 今日の放課後 例のところで待ってるぜ 忘れるなよ フエ〜 かい〜! ボリボリ 野郎ども 行くぜ! なんだ? あれ ボリ… 今の奴 たしかこの学校の番長じゃないか? お前あんな奴らとつきあっていたのか? …………………… おどかされてるんなら俺に言えよ やっつけてやるから い いやだなァ 僕あんな奴らと関係ないよ 心配しないでよ… 溜まっていたから久しぶりにすっきりしたぜ いいか これからも忘れずにここに来るんだぞ 朝いっしょだった野郎とつきあったりしたら ただじゃおかねえからな おーい 光男 いっしょに帰ろうぜ ダッ お おい光男! だめだよ あんなことのあとで剛さんとなんて顔を合わせられないよ 僕はきたないんだ 汚れてるんだよ…! 1-2 ええ 川口君はもう帰りましたよ そう 光男… なぜなんだ なぜ俺をさける? あの… 本当に川口君のことは知らないんですか? えっ? 川口君は番長のホモの相手なんですよ いつも番長に校舎の裏の空き地で掘られてるって噂ですよ 今日もあそこに行ったんだと思いますよ 知らなかった 光男がそんな…!? ギッ うっ!? ドガッ バキッ この野郎 もう番長とは会わねえだと? ふざけるんじゃねえ!! てめえは番長のペットなんだよ!! やめるんだ!! はあっ はあっ 剛さん… 光男を返してもらおうか こいつは中学の時からの俺の相棒なんでね 剛さん… 水くさいじゃないか ひとりで悩んでないで俺にうちあけてくれればよかったんだ 俺はな 中学の時からお前を好きだったんだぞ だけどお前がノンケだったらと思うと この道にひきずりこむのがこわくて好きだとは言えなかったんだ だが こうなりゃ話は別だ 俺は腕ずくでも奴からお前を奪いとって俺のものにするぞ もんくはないな? わああっ 僕もずっと剛さんが好きだったんだよォ! だけど番長のことがあってどうしても好きだとは言えなかったんだよォォ 最初見た時からそんなことだろうと思っていたよ だが 川口は俺が開発した野郎だ そう簡単にわたせると思うのかよ じょうだんじゃねえ それでも── 返してもらうと言ったら? フフン そうさな── お前さんがここで裸にでもなるというんなら考えてやってもいいさね 番長… バッ 剛さん!? ザ… 剛さん… フフン まだ裸になったとはいえねえぜ 全裸になれば光男を解放するというんだな? 約束したぜ ス… くっ… なめるんじゃねえ! 俺に勝てたら考えてやらあ! ブンッ ヒョイ ドウッ ズガッ ズダダーッ 意外に弱いな まだやるかい? く くそ〜っ くたばりやがれ!! ガッ うあおおーっ!! ズザザァー… 剛さん ひ 卑怯だぞ くっ うるせえッ! けんかに卑怯もくそもあるか ブッ殺してやるッ!! バキッ ズガッ ボグッ やめてよォ! 殴るなら僕を殴ってよ 番長と別れるなんてもう言わないからァ! 剛さんもういいよ 僕は剛さんに愛される資格なんかないんだ! 番長に誘われて欲望をおさえられずに関係を続けてきたようなばかな男なんだ 汚れてるんだよォ! だから僕のことなんかも忘れてよ… 光男… とんだお涙ちょうだいの茶番劇だぜ ペッ 川口よ 俺はいやがる野郎を無理矢理ひきとめておくほど男にゃ飢えてない 今は引きさがるがそのうちお前を屈服させてみせるぜ それまではそいつとうまくやりな 野郎ども行くぜ! いいんですかい? あんなに簡単に… ああ そのうちもっといい野郎を見つけるさ あいつの金玉── 殴りごたえがあったぜ… 番長… あいつもいいところあるな 光男よ これで俺たちは晴れて恋人同士だな じゃあ… いいんだね? こんあ僕でも… ばかやろう まだそんなこと言ってるのか 俺は今のお前が好きなんだ 過去なんて関係ねえよ 剛さん… さわってくれよ これがお前に対する今の俺の気持ちさ どうだ? 堅くて太い… 覚悟しろよ これからはこいつでお前をヒイヒイ泣かせてやるからな ズル… うん… ここ…まだ痛む? ちょっとな 番長のやつ めいっぱい殴りやがって インキンがうつればいい気味なんだがな ハハハ… アッハハ… かいい〜っ ど どおして!? ●おわり